上司に恵まれないSEのために
[No.044]「真実の瞬間」を目指せ!(2004/11/24)

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■■□ [No.044]「真実の瞬間」を目指せ!(2004/11/24)
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▼上司に恵まれないSEのために バックナンバー

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●ITサービスのプロフェッショナル

 私の友人にフリーのITエンジニアがいます。彼の顧客は、ソフト会社や
SIerの同業者ではありません。彼は、中小・零細のエンドユーザ企業か
らの仕事を直接受注しています。

 彼は、基本的に一人で仕事をしており、要求定義から開発・保守までの全
てのライフサイクルを担当しています。リピート客が多く、さらに口コミで
お客さんがお客さんを紹介してくれるそうです。仕事が次から次へと舞い込
み商売繁盛です。

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[No.044]「真実の瞬間」を目指せ!(2004/11/24)"

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上司に恵まれないSEのために
[No.043]失敗プロジェクトの中に成功を生み出す方法(2004/11/04)

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■■□ [No.043]失敗プロジェクトの中に成功を生み出す方法(2004/11/04)
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▼上司に恵まれないSEのために バックナンバー

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●「プロジェクトは人を幸せにするものでなければならない」

 先日、実用企業小説「プロジェクトマネジメント」の著者である近藤哲生
さんのお話を聴きました。

 「プロジェクトマネジメント」に対する私の書評
 
 「プロジェクトは人を幸せにするものでなければならない。」という近藤
さんの考えに共感する私にとっては実に有意義でした。

 近藤さんは、プロジェクトを成功させるためには、スポンサー、プロジェ
クトマネジャー、メンバー等のプロジェクトに関わる人間のすべてが、それ
ぞれの層で高いモチベーションを維持することが何よりも重要であると主張
されています。
 そして、そのために近藤さんは「自律的に学習するチームづくり」を促進
するプロジェクトマネジメントについてコンサルティングされており、その
内容を具体的に伺うことができました。

 多くは、小説の中で書かれていたことでしたが、直接話しを聴き、質問を
することで、さらに多くの「気づき」を得ることができました。


●失敗プロジェクトの中にも成功はある

 近藤さんは、プロジェクトメンバーのモチベーションを上げるためは、ま
ず、彼等(彼女等)の成果を認める必要があると、話されました。

 近藤さんは駅伝に例えて、以下のような内容を話されました。

 「駅伝で負けてしまったチームがあるとします。しかし、区間ごとに見る
 とトップだったところもあります。同様に失敗プロジェクトの中も、細か
 く分析してみると小さな成功はたくさんあります。そのような成功を掘り
 起こして、皆が認めてあげることが大切なのです。」

 過去に数々の失敗プロジェクトを経験してきた私にとっては、とても心に
響く言葉でした。そして、今の自分に足りないものを改めて認識することが
できました。

 「失敗プロジェクト」と呼ばれるプロジェクトが最も不幸なのは、そのプ
ロジェクトによって関係者の心身が傷ついたり、人間関係や信頼関係が壊れ
てしまうことです。
 例え、「失敗プロジェクト」が発生しても、組織やチームの良い関係が崩
れないためには、何をすれば良いのか。また、皆が失敗から学べるようにな
るためには何をすれば良いのか。
 私自身の今後の課題として取り組んでいこうと思いました。


●失敗プロジェクトの定義

 以前、仲間達とシステム開発プロジェクトの失敗発生の原因について、話
しあったことがあります。
 その時に話題になったのは、そもそも失敗とは何かということでした。
 一般に失敗プロジェクトと呼ばれるのは、以下のようなプロジェクトです。

 ・赤字を出した
 ・実績コストが計画コストを超過した
 ・納期を遅延した
 ・納品後の障害が多発した
 ・顧客からのクレームが多発した 等

 事業責任者からすれば、「赤字プロジェクト=失敗プロジェクト」という
ことになるので、SIer等の情報サービス業では、そういう文脈で語られ
ることが多いと思われます。
 しかし、本当にそうなのか、その話し合いの参加者からは疑問が投げかけ
れられました。

 ・利益は出たが、顧客満足は下がった。
 ・利益は出たが、メンバーは疲弊してしまった。

 このようなプロジェクトが、果たして成功といえるのでしょうか。

 あたりを見回してみると、確かに採算的には優良プロジェクトだけれども
雰囲気が悪く、メンバーのモチベーションが低下しているプロジェクトがあ
ります。
 その反対に、赤字プロジェクトだけれども雰囲気が明るく、メンバーのモ
チベーションが高いプロジェクトがあります。

 先日、ある赤字プロジェクトの反省会に参加しました。
 このプロジェクトは、まさしく「赤字だけれども雰囲気の明るいプロジェ
クト」でした。
 このプロジェクトは元々タイトなスケジュールだった上に、いくつかのリ
スクが顕在化してしまいました。それでもメンバー達の休日出勤や徹夜作業
によって、何とか納期に間に合わせることができました。
 普通ならモチベーションが下がりそうなものですが、メンバーに「やらさ
れ感」はなく、皆が活き活きとしながら作業を進めていました。

 何故メンバーのモチベーションが下がらなかったのか。
 この成功から学ぶべき点が多々あったのですが、この時の反省会では失敗
の原因分析に終始してしましました。
 後で、反省会のありかた自体を反省した次第です。


●小さな成功体験を積ませる

 近藤さんが、プロジェクトメンバーに日々成功体験をさせる方法として実
践され、セミナーの中で紹介されたのは、毎日のミーティングの中で問題解
決を行なう方法です。
 日々のミーティングにおいては、誰もが知っているような形式的で当たり
前の報告はせず、現在どんな問題があるかをまず抽出し、その問題を衆知を
集めて解決するという手法です。

 前回のメルマガの中で、私は『ソフト開発の現場で自主的で継続的な改善
活動を行なう組織文化を形成したい。例えば本田技研工業の「ワイガヤ」の
ようなものが、現場のあちらこちらで発生するような光景が理想である。』
と述べました。

 [No.042]「ワイガヤ」とソフト開発

 まさしく近藤さんのプロジェクトでは、私の理想が実現されていたのです。

 近藤さんはセミナーの中で、以下のように述べられました。

 ・問題を発見できたこと自体が、とってもエライ。
 ・発見した問題は、自分が解決できなくてもよい。
 ・自分に解決できないことも他の人なら容易に解決できることもある。
 ・衆知を集めて問題解決することがチーム学習となる

 このような活動を通じて小さな成功体験を積ませることで、メンバーのモ
チベーションが向上し、「自律的に学習するチームづくり」が促進されるの
です。

 また、近藤さんは、以下のように言われました。
 「人は失敗から学ぶことは困難です。成功体験をした上で、はじめて失敗
 に向き合えるようになるのです。」

 失敗から学ぶことは、本当に難しいことです。失敗から何かを学ぶために
は、まず成功体験が必要であるという近藤さんの教えを肝に銘じたいと思い
ました。

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上司に恵まれないSEのために
[No.042]「ワイガヤ」とソフト開発(2004/10/01)

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▼上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン バックナンバー
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●現場に使われない品質マネジメントシステム

 私の勤務先は、ソフト会社としては早い時期からQMS(品質マネジメン
トシステム)導入に取り組み、ISO9001の認証を取得しています。
 しかし、正直なところ、狙い通りの成果が出ているとは言い難い状況です。
 プロセスを定義し、さまざまなルールや標準化を導入して、短くない年月
が経ちますが、どうしても現場に定着しません。

 ISO9001の導入を担当した品質保証部長は、部下を厳しく指導する
タイプのマネジャーでしたが、いくら注意されても、いくら叱責されても、
なかなかルールが守れないのです。
 今や、ISO9001の認証を維持することが目的化してしまった感すら
あります。


●現場に漂う「やらされ感」

 QMSの実行が現場に定着しない理由については、私なりに原因分析をし
てみました。いろいろな要素が絡んでいますが、個人的に最も重要な原因と
感じているのは、現場の「やらされ感」の深さです。

 どんな人間でも他者から強要されてやることは、継続しません。
 また、そこには自主的な改善は生まれづらく、楽しさや喜びもありません。
 そして、品質に対する自己責任も芽生えません。

 現場に、QMSを定着するためには、何としても「やらされ感」を払拭し
なければなりません。そのためにはQMSに沿った手順とは異なるアプロー
チが必要であると思います。

 プロセスを定義してルールや手順書を作成し、トップダウンでQMSを導
入することは、それはそれで意味があることですが、それだけでは明らかに
不十分なのです。


●トップダウンではなくボトムアップ

 QMSの問題とは別に、私は以前から現場が自主的に継続的な改善活動を
する組織文化を形成したいと思っていました。日本が世界に誇る製造業で、
日々行われているような継続的な改善活動をソフト開発の現場で実現したい
と思っていたのです。
 例えば、本田技研工業「ワイガヤ」のようなものが、現場のあちらこちら
で発生するような光景が理想です。

 ソフト開発の現場でも、日々さまざま問題が発生していますが、そのよう
な問題に対する対応は個人任せで、しかも現象面に対する対処で終わってい
ることが多いような気がします。
 多くのSEには、問題を発生させている因果関係を考えたり、最も重要な
原因に対する対策を講じた経験が少ないように感じます。

 まして、衆知を集めて問題を解決した経験を持つ人は少ないのではないで
しょうか。
 チームによる問題解決の楽しさや継続的改善の楽しさを、SEに実感して
欲しいと思います。またそのような活動を通じて、プロとしての自己責任や
自己啓発に対する意欲、またSEとして極めて重要な能力のいくつかが磨か
れていくような気がしています。


●では私に何ができるのだろうか

 ただ、トップダウン的に「ワイガヤ」をやれといのも本末転倒ですし、無
理やりQCサークルを立ち上げてQC活動を始めても、やはり「やらされ感」
が発生してしまいます。

 「今の自分には何ができるのだろうか」と考えた時に、日々現場で起きて
いるような具体的な問題をテーマとしたワークショップを、私自身が主催し
てみようと思い立ちました。
 これはと思う人達に対して、私の思いと狙いを説明し、賛同してくれたメ
ンバーで自主的なワークショップを立ち上げようと考えています。
 そして、このワークショップを経験したメンバーを中心にして、徐々に現
場へ展開できれば良いなぁと思っています。


 そんな話しを、つい先日のコーチング・セッションで、私のコーチに話し
たところ、「中村さんのやりたいことは「ニワトリを殺すな」の中で開催さ
れていたような会議ですね。」と指摘されました。

 「ニワトリを殺すな」ケビン・D・ワン著

 コーチに言われるまで、「ニワトリを殺すな」のことは、まったく頭にあ
りませんでした。(元々、この本をコーチに紹介したのは私です。)
 考えてみれば、この本は、本田技研工業がモデルになったお話しでしたの
で、「ニワトリを殺すな」で開催されていた会議のイメージが、私の潜在意
識にあったことは間違いありません。

 コーチのお陰で、自分がやりたいワークショップのイメージが明確になり、
ヒントを得ることができました。

 このワークショップの試みが、うまくいくかどうか未知数ですが、状況に
ついてはこのメルマガでお知らせしていきたいと思っています。

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上司に恵まれないSEのために
[No.041]「NOと言えないSE」と顧客満足(2004/09/13)

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▼上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン バックナンバー
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●「NOと言えないSE」

 先日、ある大手SI企業の経営者がパネルディスカッションの中で、「N
Oと言えないSE」という言葉を使いました。
 この企業は、大きな失敗プロジェクトが発生して直近の決算で赤字を出し
てしまいました。失敗プロジェクト発生の原因の一つとして、その経営者は
「NOと言えないSE」と言う言葉を上げたのです。

 失敗プロジェクト発生の原因は複雑にからんでおり、単純ではありません。
単独のプロジェクトとしてだけでなく、経営や組織という大きなシステムの
問題として捉える必要があります。
 ただ、私の経験から言っても、「NOと言えないSE」が、失敗の原因の
一つになることは少なくありません。

 具体的には、以下のようなケースです。

  顧客が思いつきで言った仕様変更を安易受け入れ、結果的にはプロジェ
  クトの目的に合わないシステムになってしまった。

  請負に馴染まない案件を、顧客の強い圧力に負けて一括請負契約で受注
  し、大幅な納期遅延とコスト超過を起してしまった。

 SIプロジェクトの場合、お客さんの言うことを安易に引き受けて、結果
的にはお客さんに損失を与えてしまうケースは少なくありません。
 お客さんの言いなりに仕事をすることは、最終的に「顧客満足」にならな
いことがあるのです。

 何でもかんでも顧客の言いなりになってしまうSEは、実のところ「顧客
満足」を実現しようとしているのではなく。ただ単に、顧客と摩擦を起こさ
ず、その場を切り抜けたいという行動様式があるのではないかと思います。

 適切な「NO」が言えることは、プロジェクトを成功させる上で、とても
重要なことです。

 かといって、何でもかんでも「NO」と言えば良い訳ではありません。
 我々はお客さんからお仕事を頂いています。従って、常にお客さんの立場
に立ってお客さんのお役に立てるようにしなければなりません。
 「YES」と言うにしろ「NO」と言うにしろ、それがプロジェクトの目
的に沿っており、最終的な「顧客満足」につながるかどうかを吟味する必要
があります。


●SI業界における「顧客満足」

 「顧客満足」はSI業界においても多くの企業が掲げています。
 しかし、「顧客満足」を心から実践している企業は少ないように思います。
 経営者やマネジャーも「顧客満足」を、よく口に出します。しかし、その
思想はSIの現場に十分に体にしみ込んでいないように思います。

 なぜ現場に浸透しないかと言えば、経営者やマネジャー自身が「顧客満足」
を口にしながら、実は頭の中だけで理解していて体現していなからだと思い
ます。

 先日、好川哲人さんがメルマガの中で、売り手市場であったSI業界にお
いては、顧客主義を頭ではわかっていても、なかなか実現できないというこ
とを書かれていましたが、まさしくご指摘の通りだと思います。

 これは「顧客満足」を口にしている当人も気がついていないことがあるの
で、やっかいです。(私自身も、常に胸に手をあてて考えてみる必要がある
と思っています。)


●二人の営業担当者

 ある情報サービス業に勤務する二人の営業担当者の話しです。(仮にAさ
んとBさんとします。)

 彼らは、別の上司の下でSIのセールスを担当しています。 
 Aさんの上司もBさんの上司も、常日頃から「顧客満足」を口にしていま
す。

 もし、お客様から自社の能力を越える案件の引合いを頂いた時には、どう
対応するかについて、それぞれの上司は以下のような指導をしていました。

 [Aさんの上司]
  もし、自社の能力を越える引合いをもらった時には、売上獲得等の短期
 的な利益を求めて安易にできると言ってはいけない。無理な受注は結果的
 にお客さんに多大な迷惑をかけるし、プロジェクトチームに大きな負荷を
 かけてしまう。
  しかし、簡単に「できません」と断ってはいけない。
  話しをよく聞き、質問をして、お客さんの真の目的やニーズは何かとい
 うことを良く捉えて、自社の能力を使って、そのお客さんに貢献できるよ
 うなことはないかを知恵を絞って考え、提案しなさい。その結果、どうし
 ても対応不可能であれば、お役に立てなかったことを率直に詫びてお断り
 しなさい。
  心から、お客さんのために何とかしたいと思って行動すれば、その引き
 いに対応できなくとも、けっして顧客満足度が下がることはない。

[Bさんの上司]
  もし、自社の能力を越える引合いをもらった時には、安易にできると言
 ってはいけない。無謀な受注は結果的に大きな損失を招くことになるから
 だ。
  しかし、簡単に「できません」と断ってはいけない。顧客満足度が下が
 って、次から仕事がもらえなくなる可能性がある。
  納期は延ばせないか料金は上乗せできないか等、さまざまな対案を示し
 て、お客さんの方から断るようにしむけることが大切だ。
  そうすれば、お客さんの方に精神的な借りができることになるので、次
 回の機会にもまた声をかけてもらえる。

 AさんとBさんは、上司の指導に沿って行動しました。二人がそれぞれの
顧客に示した提案の内容は、ほぼ同じようなものでした。結果的にお客さん
と契約条件や仕事の内容で折り合いがつかず、この案件を受注することはで
きませんでした。

 その後、Aさんは顧客から信頼の厚い営業として顧客から厚い信頼を得て
います。一方、Bさんは、「あの営業は、どこか裏がありそうで信用できな
い」と顧客からの評判はよくありません。

 この二人の営業担当者には「顧客満足」において違いが生まれました。
この違いは、どうして発生したのでしょうか。

 この二人の営業担当者の行動は表面的には同じように見えます。しかし、
決定的に違うのは、その「動機」です。
 Aさんの方は、顧客の利益を第一に考えていますが、Bさんの方は自社の
利益を優先しています。
 表面的に同じような行動をしていても「動機」がことなれば、ちょっとし
た言動にその違いがあらわれます。お客さんは、その違いを肌で感じていま
す。


 適切な「NO」が言えることはとても大事なことです。しかし、もっとも
重要なのは、その「動機」が何かということなのだと思います。

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上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
[No.040]リスクマネジメントとリスクテイク(2004/06/30)

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▼上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン バックナンバー
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●リスクマネジメントの不在

 ある時、大きな赤字を出したプロジェクトの反省会にオブザーバとして参
加しました。

 失敗原因として、「顧客がなかなか仕様を決めてくれなかった」とか「は
じめて取引をした顧客で勘違いや行き違いが多かった」等のITプロジェク
トでは、お馴染みの原因が列挙されました。

 当事者からは挙がりませんでしたが、私が一番大きな失敗原因だと感じた
のはリスクマネジメントの不在でした。

 確認したところ、そのプロジェクトは立ち上げ段階に十分なリスク計画を
行っていませんでした。
 そのため、実行段階で顕在化したリスクに対しての対応が後手後手に回っ
ており、まさに無防備な状態でした。

 事業責任者およびプロジェクトマネジャーに対して、「このプロジェクト
はリスクマネジメントが不十分でしたね。」と指摘したところ、そのプロジ
ェクトマネジャーは憮然として「それは結果論に過ぎない。リスクを事前に
予測するなんて無理だ。」と言い放ちました。

 確かにリスクには予想できないものもあると思いますが、過去の体験から
予測できるものも少なくありません。今回のプロジェクトで現れたリスクの
大半はプロジェクトマネジメントの経験者なら容易に予想できるものでした。
(少なくとも私はそう思いました。)

 リスクは予測できないと言い放ったマネジャーは、おそらく過去の経験か
ら何も学んでいないのだと思います。
 そのマネジャーは、その後も似たような失敗を繰り返しています。


●リスクマネジメントの手順

 失敗プロジェクトにおいては、リスクマネジメントがなされていないケー
スが少なくありません。
 これらのプロジェクトは着手前のリスク計画が不十分で、実行段階におい
てもリスクを監視していた形跡がありません。

 リスクマネジメントの一般的な手順は以下の通りです。

 ・リスク発見:どのようなリスクがあるか洗い出す
 ・リスク分析:それぞれのリスクの生起確率と影響度を想定する
 ・リスク対策:それぞれのリスクが発生した場合の対策を予め想定する。
 ・リスク監視:リスクあるいはリスクの予兆を監視しコントロールする。

 リスク発見と分析が不十分な場合は、自分達がどのようなリスクにチャレ
ンジしているかが明確に認識されていません。そのためリスクの顕在化をキ
ャッチするセンサーがまったく働きません。

 また、リスク対策がないため、リスクの発生を抑える先見的な行動がまっ
たく取れません。そして、リスクが顕在化した時には、無防備な状態で対応
が後手後手となります。

 それは、いつ氾濫するか分からない河川の流域に住んでいながら、どんな
危険があるのか予測もせず、何らの対策も立てないで暮らしているのと同じ
です。

 多くのITプロジェクトは生み出そうとしているものが曖昧で混沌として
います。その上、環境が激変します。
 また、受注者と発注者という関係や管理する側される側という間には必ず
利害関係の不一致があり、そこにはリスクを生み出す要因があります。

 つまりITプロジェクトは、それ自体がリスク(不確実性)の塊のような
ものです。
 ITプロジェクトを成功させるには、ITのスキルやノウハウは必要不可
欠なものですが、それだけでは十分ではありません。
 ITプロジェクトをリスク(不確実性)マネジメントなしで成功させるこ
とは困難なのです。

 リスクマネジメントは、プロジェクトマネジャーの腕の見せ所です。
 また、メンバーはリスク顕在化の臭いをいち早く察知してプロジェクトマ
ネジャーに報告するスキルと行動様式を身につける必要があります。


●リスク発見を阻害するもの

 リスクマネジメントの第一歩は「リスク発見」です。
 しかし、この「リスク発見」のプロセスを実行するのが、なかなか難しい
のです。

 私は勤務先において、プロジェクト計画にリスクマネジメントを導入する
ことを狙いとしてリスク・チェックシートを作成し、見積り時に義務付けて
いました。

 しかし、この目論見は見事に失敗したのです。

 多くのプロジェクトで行われていたのは、チェックシートの空欄を埋める
という単なる作業でした。
 まず形から入ることが重要と思いましたが、いつまで経っても魂が入らな
かったのです。

 形やルールだけを定めても、組織にリスクマネジメントを根付かせるのは
簡単ではありません。
 なぜならリスクマネジメントは、企業文化や事業責任者のキャラクターと
密接に結びつくからです。

 デマルコ&リスターは著書「熊とワルツを」の中で、リスク発見の阻害要
因として次のような不文律が企業文化に組み込まれていると指摘しています。

  1.マイナス思考をするな
  2.解決策が見つからない問題を持ち出すな
  3.問題だと証明できないことを問題だと言うな
  4.水をさすな
  5.すぐに自分で解決を引き受けるつもりのない問題を口に出すな


『熊とワルツを-リスクを楽しむプロジェクト管理』より
熊とワルツを-リスクを楽しむプロジェクト管理


 リスク発見の際には、とにかく後ろ向きなことをいかに多く言えるかが重
要なスキルとなります。
 その場にいる上席者が後ろ向きな発言を公式に容認し、「リスク発見モー
ド」になることが重要です。

 不安に思っていることを安心して口に出せる雰囲気を作り出すことが大切
なのです。


●リスクテイクと無謀

 リスク発見し分析したら、そのリスクはマネジメント可能かどうか、また
リスクテイクするだけの価値があるかを検討することが重要です。

 リスクの発見と分析は、リスクを洗い出しリスクを回避するためだけにや
るのではありません。本質的にはリスクテイクするためにやるだということ
を忘れてはなりません。

 環境変化の激しい今日においてはリスクテイクしない組織は発展すること
ができません。
 ただ、「リスクテイク」と「無謀」が異なることを理解する必要があるの
です。


 そして、自分戦略においてもリスクマネジメントは重要です。
 リスクは自分自身の枠を広げる絶好の機会となるからです。
 リスクテイクしない人間は、良い偶然を捉えることができません。そして、
リスクテイクしないと、良いキャリアを形成することはできないのです。

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▼閑話休題▼

 学生時代に麻雀にはまっていた時期があります。
 私がはまっていたのは、ギャンブルとしての麻雀ではなく「競技麻雀」と
呼ばれるものでした。仲間うちでは記録を残し成績を競いあり、「近代麻雀」
でお馴染みの竹書房が主催する大会にも参加していました。

 麻雀は偶然の要素が強い競技で、いわばリスクの塊です。
 偶然の要素が多いので、個々のゲームは時の運なのですが、記録を蓄積し
ていると、少数の勝ち組と大多数の負け組にわかれます。つまり長期的には
実力差が明確に出るゲームなのです。

 負け組を分析すると二つに分類できます。
 一つは、強気一筋で何も考えていない無謀派。もう一つは石橋を叩いても
渡らないような弱気な慎重派です。

 一方、勝ち組になれるのは、場の流れや自分を含めた競技者間のツキのバ
ランスを読みながら、ここぞというチャンスに勝負(リスクテイク)できる
タイプです。

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ご意見・ご感想・ご質問:mentorpin@mbk.nifty.com
購読登録・解除: http://homepage3.nifty.com/mentorpin/malmaga.htm
──────────────────────────────────
発行元:メンターピン・コンサルティング
     http://homepage3.nifty.com/mentorpin/
──────────────────────────────────
原則として無断転載を禁じます。
ただし、内容を一切改変せず全文転載する場合に限り転載許諾は不要です。
(C) Copyright Mentorpin Consulting 2004
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上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
[No.039]「強気のスケジュール」が不幸を招く(2004/06/06)

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▼上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン バックナンバー
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●X社からの引き合い

 随分と前の話ですが、あるお客さん(仮にX社と呼びます)から引き合い
を頂きました。
 X社は某大手企業の情報システム部門が独立した会社で、引き合いを頂い
たA課長は親会社からの出向者でした。

 A課長から提示された納期は4ヵ月後。
 ヒアリング後、さっそく見積りに取り掛かりました。

 しかし、持ち帰った資料には曖昧な点や矛盾してる点が多々ありました。
 不明な点はX社のSEに質問をしましたが、どうしてもクリアにならない
点がいくつか残りました。

 結局、現時点では指定された納期を約束するのは不可能であるという結論
に達しました。(スケジュールリスクがマネジメントできるレベルではない
と判断しました。)
 私達としては納期延長のお願いをするほかはなく、見積書と見積仕様書を
A課長に提出しました。

 私達の説明の最中、A課長は苦虫を噛み潰したような顔をされていました。
 そして説明終了後、「顧客の提示したスケジュールを延長して提案してく
るとはベンダーにあるまじき行為である」とお叱りの言葉を頂きました。

 A課長曰く、「自分は、顧客からの引き合いは、どんなに無理と思っても
絶対に断らない。そんなことをしたら仕事は二度ともらえなくなる。実現不
可能なスケジュールでも引き受けるのが受注者の態度である。」とのことで
した。

 しかし私達としては実現不可能な条件を受け入れることはできず、叱責さ
れながらも粘り強く交渉しました。

 結局は、受託範囲を大幅に削減して頂き、リスクはあるものの何とかマネ
ジメントできるレベルにまでには持ち込むことができました。

 私達が受託しなかった部分については別の協力会社であるY社が受託し、
このプロジェクトはスタートしました。


●デスマーチ・プロジェクト

 さて、このプロジェクトは、いったいどうなったでしょうか。

 私達の担当分は、いくつかの問題が発生しましたが、何とか納期に納める
ことができました。
(ただし、メンバーに残業や休日出勤が発生したことと、納品後に一部のプ
ログラムに品質問題が発生したため採算的には厳しい結果になりました。)

 一方、我々に代わって大半の部分を引き受けたY社は大幅な納期遅延を起
こしてしまいました。
 納期遅延後に追加料金は得たようですが、おそらく大きな赤字を出したも
のと思われます。
 またY社メンバーは毎日のように遅くまで残業しており疲弊している様子
でした。プロジェクト終了後に退職したメンバーもあったようです。

 Y社にとっては、いわゆる「デスマーチ・プロジェクト」になりました。

 Y社は「強気スケジュール」を実現しようとして人をかき集め短期間に要
員を投入しました。
 まったく余裕のない体制とスケジュールは結果的に品質の悪化を招き、そ
の改修に多大な時間と労力が費やされました。
 また、ゆとりのないY社プロジェクトマネジャーの対応は柔軟性を欠き、
顧客の不満がつのりました。そして、それが合意形成の上でも大きな障害に
なったのです。

 当然のことながら、このプロジェクトでは誰も得をしていません。

 このプロジェクトでは、提示された納期の重要性は薄かったように感じて
います。
 顧客やトップから与えられた「強気のスケジュール」を部下や協力会社に
丸投げしたり、リスク分析をすることなく安易な約束をするという思考停止
状態でプロジェクトが進んでしまったことが、皆を不幸にしました。


●急がば回れ

 「急がば回れ」という言葉がありますが、システム開発プロジェクトに関
しては、「余裕のあるスケジュール」の方が、「強気のスケジュール」より
も結果的にスケジュールが短くなることがあります。

 「たられば」は禁物ですが、もしA課長が私達の提案を受け入れて、余裕
のあるスケジュールを承認して頂ければ、このような不幸なプロジェクトに
ならなかったのではないかと思っています。
 結果論になってしまいますが、納期もコストも品質も、「強気のスケジュー
ル」が原因で悪化したように思います。

 私達の周りには「強気のスケジュール」が、たくさん存在します。
 「プロジェクトの真の目的は何か?」という観点で見直した時、挑戦に値
する「強気のスケジュール」は果たしていくつあるのでしょうか。

【念のための補足】

 「強気のスケジュール」が単なる目標ではなく、プロジェクトの目的とし
て重要性を持つ場合があります。
 このような場合、リスクマネジメントを行ないながら「強気のスケジュー
ル」に挑戦することは意義のあることです。(ただし、困難ではあるが実現
可能なスケジュールに限ります。)


●何故、「無意味な強気のスケジュール」が生まれるのか

 プロジェクトの真の目的に沿っていない「無意味な強気のスケジュール」
が何故存在してしまうのでしょうか。

 原因としては以下のことが考えられます。

 ・アナリストの評価を最優先する経営者のスタンス。
 ・コスト削減やスピードUPに関する組織全体へのプレッシャー。
 ・プロジェクトの目的がステークホルダー間で共有されていない。
 ・トップダウンの目標設定に対してボトムアップ(ミドルアップ)のフィ
  ードバックがない。
 ・マネジメント層が意思決定しない。(現場へのまる投げ)
 ・不適切な成果主義、特に目標管理制度の弊害。
 ・間違った顧客志向。
 ・ベンダーの安易な受注。
 ・リスクマネジメントが行われていない。

 皆さんの勤務先ではいかがでしょうか。


●「強気のスケジュール」は競争力を低下させる

 最近は睡眠障害を訴えたり、鬱病になるITエンジニアが増えています。

 また、現場からは若手を育成する余裕がないという声が上がっており、若
手のキャリア形成に支障が発生しています。

 あくまで個人的意見ですが、この原因の一つには「強気のスケジュール」
があると私は考えています。
 プロジェクトの目的に沿っておらず、コスト削減やスピードUPという目
標が目的化した「無意味な強気のスケジュール」は、多くの不幸なSEを生
み出しています。企業の礎である人材を破壊し、成長を妨げているのです。

 コスト削減とスピードUP。
 確かにこの二つは競争力向上の目標には違いありません。
 しかし、それはあくまで結果指標に過ぎないと思います。

 組織の競争力は、個人のレベルUPや組織力の向上によってもたらされ、
それが結果的にコスト削減やスピードUPに繋がっていくのだと思います。

 長期的には、余裕のない組織に人は育ちません。
 つまり真の競争力は生まれないのです。


●「強気のスケジュール」と戦う意志

 とは言え、現在の情報サービス産業を取り巻く情勢からは、「強気のスケ
ジュール」が増えることはあっても減ることはないでしょう。

 しかし、意味のない「強気スケジュール」と戦っていかなかれば、業界全
体を覆うこの悪習は改革できません。

 そして、この改革は現場に関わる人達がボトムアップ(ミドルアップ)で
起こしていく他はないと思います。

 「強きのスケジュール」に対しては、ボトムアップ(ミドルアップ)によ
るフィードバックが大切です。
 場合によっては経営のレベルまで遡って、「強気のスケジュール」の意義
を確認し、もし本当に意味のあることなら、その目的をステークホルダー全
員で共有することが大切です。

 この闘いは長期戦になるかもしれませんが、あきらめてはなりません。
 地道な努力は、いつの日にか実を結びます。

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▼閑話休題▼

 現在、ピンチプロジェクトの支援をしています。
(その関係で、メルマガの発行やブログの投稿に支障が出ております。申し
訳ありません。)
 プロジェクトマネジャーを後方や側面から支援しているうちに、気がつい
たら最前線に出てしまいました。久々の現場です。

 お客さんや協力会社、プロジェクトメンバーとやり取りしていると、突然、
体の中でスイッチが入るのを感じました。(血がたぎり、闘志がフツフツと
沸きあがってきました。)

 やはり私は現場が好きなようです。

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上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
[No.038]プロジェクトを失敗させる秘訣(2004/05/17)

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■■□  [No.038]プロジェクトを失敗させる秘訣(2004/05/17)
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▼上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン バックナンバー
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●はじめに

 このメルマガの読者の方々の大半は、SEの方々だと思いますが、今回は
趣向を変えて、情報サービス産業の経営者や事部長向けにお届けします。

 お届けする内容は、タイトルの通り「プロジェクトを失敗させる秘訣」で
す。プロジェクトの失敗に喜びを感じる経営者や事業部長は必読です。


●プロジェクトを失敗させるための経営方針

 プロジェクトを失敗させるのにまず大前提となるのは、経営の方針です。

 プロジェクトを失敗させるための経営方針にはさまざまなものがあります
が、一番効果が高いのは、「売上高至上主義」です。

 経営者や事業部長は、売上を上げることこそ組織が発展し存続するための
最大にして最終の目標と位置付ける必要があります。

 組織がどのような問題を抱えていようともプロフィットセンターのライン
マネジャーや営業担当者の尻を引っぱたいて、目標売上を達成することに注
力させましょう。
 組織内に存在するいかなる問題も、売上さえ上がればすべてが解決できる
ことを信念とし、それを組織内に浸透させましょう。


●プロジェクトを失敗させるための顧客選び

 プロジェクトを失敗させるためには、顧客選びが最大のポイントです。

 こちら側がいくら失敗のお膳立てをしても、顧客側に優秀なプロジェクト
マネジャーがいてはすべての苦労が水の泡になってしまうからです。

 ではどのような顧客を選べば良いかですが、以下のようなプロジェクトマ
ネジャーや窓口担当者がいる顧客がお薦めです。

 ・プロジェクトの真の目的が何かなどは、まるで考えない。自分の立場や
  視点に限定された利害のみを優先し、それを他のステークホルダーに押
  し付けようとする。

 ・何よりもコスト削減を優先し、外注企業の選定に関しては技術力よりも
  低価格であることを重要視する。

 ・外注は甘い顔を見せると怠けるので、とにかく無理なスケジュールを強
  要することが管理の秘訣だと考えている。

 ・外注企業にまる投げし、すべてのリスクを外注企業に負担させようとす
  る。例えば、見積もりが不可能なフェーズにおいても一括請負契約を強
  要する。

 ・引き合いに出した案件を外注企業が辞退したり条件をつけるなどもって
  の外と考え、辞退するなら今後の取引を縮小することを、ほのめかす。


●プロジェクトを失敗させるためのキーマン

 プロジェクトを失敗させるためには、社内のキーマンが必要です。
 キーマンに与える使命や役割は以下の通りです。

(1)プロフィットセンターのラインマネジャー

 まずは、彼等にほとんど達成不可能な売上目標を与えましょう。そして年
がら年じゅう発破をかけましょう。(元々無理な目標ですから、結果的に達
成できなくても構いません。)
 その上で、各部門の経営資源配分に関するすべての権限を委譲し、案件受
注に関する意思決定を彼等にまる投げしましょう。

 これによって、彼等はどんな案件に対しても貪欲に喰らいつくようになり
ます。
 間違っても、PMOを設置し第三者的なレビューを実施する等、ラインマ
ネジャーの思考停止状態を邪魔するようなマネをしてはいけません。

(2)営業担当者

 営業担当者には、ラインマネジャーと同様に達成不可能な売上目標値を与
えましょう。
 そして受注した売上高の大きさですべてを評価しましょう。営業担当者は
結果がすべてです。営業活動のプロセスを評価してはいけません。

 営業担当者には、案件受注に集中させることが大切です。間違っても受注
後のプロジェクトの顧客対応やプロジェクトマネジャーの支援等をさせては
いけません。
 受注とともに、そのプロジェクトはプロジェクトマネジャーにバトンタッ
チさせ、新たな案件の受注活動にまい進させましょう。
 「後は野となれ山となれ」を、プロジェクトに対する営業担当者のモット
ーとさせましょう。

(3)提案書作成担当および見積り担当者

 彼らの役割は、バラ色の提案書を書くことです。
 顧客から示されたRFPに曖昧な点があって正確な見積りができないと思
ったり、指定されたスケジュールを守ることは無理だと思っても、そんな「
後ろ向き」なことを言わせてはいけません。
 顧客から提示されたコストやスケジュールに合わせた提案書や見積りをす
るのが、彼らの使命なのです。
 確実に「できない」と証明できないことは、すべて「できる」として提案
させましょう。できない可能性が99%でも、「できる」と言わせるようにし
ましょう。

 言うまでもなく、受注した後は、彼等をプロジェクトに関わらせてはいけ
ません。営業担当者と同じく、「後は野となれ山となれ」を彼等のモットー
とさせましょう。


●プロジェクトを失敗させるための人事評価

 根拠がなくても「やります。何とかします。」と積極的に手を上げる人間
に高い評価を与えましょう。
 とにかく「あたって砕けろ」の玉砕精神の持ち主や無謀な楽観主義者を引
き上げることが大切です。

 「できないかもしれない」とか「リスクがある」とか、後ろ向きの発言を
するような奴に対しては、「マイナス思考をするな」とか「水をさすな」と
言って常日頃から不快感を表すことが大切です。

 もし、失敗した場合でも、玉砕精神の持ち主や無謀な楽観主義者を降格さ
せたり減給してはいけません。
 なぜなら、彼等は、今後もプロジェクトを失敗させるのに必要不可欠な人
材だからです。

 ただし、失敗した場合はネチネチとした嫌味を言うことが必要です。これ
は面と向かってではなく、公の場で間接的に言うことがポイントです。
 また客観的・科学的な問題分析などしてはいけません。すべてを誰かのせ
い(システムではなく人のせい)にすることが必要です。

 これによって、責任追及の矛先は自然とプロジェクトマネジャーやプロジ
ェクトチーム(現場)に向かうことになります。
 また、反省するマインドと問題分析のスキルを現場から失わせる効果があ
ります。


●プロジェクトを失敗させるための総仕上げ(PMの選出)

 上記のような施策をとれば、いかに優秀なプロジェクトマネジャーが配置
されてもプロジェクトを成功に導くことは不可能です。安心しましょう。
 従って、プロジェクトマネジャーの人選に特に気を使う必要はありません。

 ただし、警戒しなければならないタイプのプロジェクトマネジャーがいま
す。それは、以下の二つのタイプです。

 ・より高い次元でステークホルダー間の合意を形成するマインドとスキル
  の持ち主

 ・先見性が高く、優れたリスクマネジメントのマインドとスキルの持ち主

 彼らは、破綻しかけたプロジェクトを一つにまとめてしまうかもしれませ
ん。また、失敗のための布石を用心深く取り除いてしまうかもしれません。

 こういう人物は要注意ですので、ご用心あれ。

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▼閑話休題▼

 先日、絵を購入しました。
 購入した絵は、桜桃の水彩画で、描いたのは私の高校の大先般の画家です。

 数年前、この方といっしょに飲む機会がありました。お話しているうちに
この大先輩と、若くして亡くなった私の叔父とが親友だったことがわかりま
した。
 私の叔父は中学校の美術教師で素人画家でした。私は幼い頃、この叔父に
随分と遊んでもらいました

 彼等は高校時代の夏休みに二人きりで絵画旅行に出かけました。アルバイ
トをしながらコツコツと貯めたお金を全てはたいて、故郷である山口県から
黒部渓谷に行ったそうです。昭和20年代の話です。

 私は亡くなった叔父の絵を一枚だけ所有しています。
 絵画旅行の話を聞いた時に、いつか叔父の絵をその大先輩の絵と並べて壁
にかけたいと思っていたのです。

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上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
[No.037]反省する力(2004/04/28)

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●不幸なプロジェクトのベテランSE

 ベテランSEのAさんは、なぜか不幸なプロジェクトに関わってしまうこ
とが多い人です。
 不幸なプロジェクトとは、例えば以下のようなプロジェクトです。

 ・一生懸命やっているのに、顧客からクレームがついてしまう。
 ・メンバーのモチベーションが低く、チームのムードは最悪。
 ・メンバーは残業が多く、休日出勤や徹夜は当たり前。
 ・納品後も障害が多発し、プロジェクトがなかなか終わらない。
 ・担当するプロジェクトが赤字になり、周りから冷たい視線を浴びる。

 そしてAさんは、これらの不幸なプロジェクトにおいて開発リーダー等の
重要な位置にいることが多いのです。

 皆さんは、「きっとAさんの知識やスキルが不十分なのだな」と思われた
かもしれません。
 しかしAさんの知識やスキルは、けして低くありません。

 Aさんは、
 ・有名大学の理系出身で学歴に申し分はない
 ・IT関連の高度な資格や認定を取得している
 ・他のメンバーと比べて設計や開発のスキルは高い
 ・言語能力や作文能力の水準も低くない
のです。

 こう述べると皆さんは、「きっとAさんのプロジェクト実務経験が不足し
ているのに違いない」と思われたかもしれません。
 しかし、Aさんは、成功も失敗も含めて過去にも数々の実務経験を有して
いるのです。

 振り返ってみると、Aさんが関わったプロジェクトの多くは同じようなと
ころで失敗しているようです。Aさんは、キャリアだけは豊富ですが、経験
からあまり学んでいないのです。

 Aさんのようなタイプは、私たちの周りには少なくありません。

 大抵の人は、キャリアを経て経験を積み重ねれば知識やスキルを獲得する
ことができます。
 しかし、「プロフェッショナルとしてのノウハウや勘」は経験を積んだだ
けでは獲得できないようです。
 不幸なプロジェクトを発生させないためには、もちろん知識やスキルは必
要不可欠なのですが、それだけでは不十分で、「プロフェッショナルとして
のノウハウや勘」が必要なのだと思います。


●「プロフェッショナルとしてのノウハウや勘」を獲得する方法

 では、Aさんのように経験から学べない人と経験を通じて「プロフェッシ
ョナルとしてのノウハウや勘」を習得している人では、いったい何が異なる
のでしょうか。

 以前のメルマガで述べましたが、私には心の中で密かにメンター(師匠)
と仰ぐ人々がいます。

 上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
  [No.016]メンターを探せ!(2003/05/09)

 私のメンター(師匠)は、「プロフェッショナルとしてのノウハウや勘」
を有している人達です。彼等の行動を観察したり話を聞いていると、共通す
る「力」があることに気がつきます。

 それは、「反省する力」です。

 彼等は自分の経験を客観的かつ分析的に振り返る習慣を有しているように
思います。また何らかの形で、その経験を抽象化し表象化しています。

 具体的には、以下のような行動(思考)です。

 ・プロジェクト終了時には必ず反省会を開催し、その内容をドキュメント
  化している。
 ・顧客とのミーティング後に、参加メンバーで反省会を開き、良かった点
  や悪かった点についてお互いに話し合っている。
 ・ある事実に対して下した自分の判断について、その思考過程を分析して
  いる。
 ・自分の言動に対して他者がどのように感じたか、また他者にどのような
  影響を与えたかを想像している。

 一方、「反省する力」の弱い人には以下のような行動(思考)が見受けら
れます。

 ・自分に甘く、簡単に自己満足してしまう。
 ・自己を正当化し、不都合があると何でも他人のせいにする。
 ・経験を分析的かつ客観的に振り返ることができないため「反省」でなく
  「後悔」になってしまう。
 ・物事を抽象化できず、個々の経験から関連性や連続性を見つけることが
  できない。

 「真のプロフェッショナル」としてキャリアを形成するためには、「反省
する力」は必須と考えています。

 私も発展途上の人間であり、日々「反省」を忘れずキャリアを形成してい
きたいと考えています。
 実は最近、内省のために日記をつけることにしました。
 皆さんも、まず日記をつけるところから始めてみませんか。

--------------------------------------------------------------------
■「自分戦略」へのヒント

 ・「真のプロフェッショナル」になるためには知識やスキルを身に付ける
  だけでは不十分である。
 ・「真のプロフェッショナル」になるためには経験を通じて「プロフェッ
  ショナルとしてのノウハウや勘」を獲得する必要がある。
 ・経験を通じて「プロフェッショナルとしてのノウハウや勘」を獲得する
  ためには「反省する力」が必要である。

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▼閑話休題▼

 日経ビジネス(2004.4.26)のコラムの中で、数学者の広中平祐さんが以
下のように述べられています。

  「どんな人でも活躍できる場がある。その人が“はまる”場がある」
  数学の世界でもビジネスの世界でも、秀才ばかりでは成り立ちません。
 元気のいい“落ちこぼれ”が時々思いもよらない大きな仕事を成し遂げる
 ことがあるんですね。

 元気が湧き出る言葉のプレゼントを頂いた気持ちです。同郷(山口県)の
大先輩である広中先生に感謝です。

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上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
[No.036]偶然を仕掛けよう!(2004/04/14)

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●お詫びとお礼

 最近、すっかり発行頻度が減ってしまいました。申し訳ありません。
 勤務先での職務範囲が大きく広がった上に、「PMシンポジウム2004」実
行委員のボランティア活動に気合が入り過ぎて、メルマガ発行に費やす時間
がなくなってしまいました。

 「PMシンポジウム2004」の方は、私がPMを担当していた企画フェーズ
がほぼ完了しました。このメルマガも、従来の発行ペースに戻れると思いま
す。

 さて、前回のメルマガには多くの方からご意見ご感想を頂きました。
  
  [No.035]「いきあたりばったり」で行こう!

 メールを送って頂いた方々に心から感謝します。
 フィードバックを頂いたことで、多くの「学び」と「気づき」を得ること
ができました。
 今回は、皆さんから頂いたメールを元にして、前回テーマの続編をお届け
します。


●プランド・ハップンスタンス・セオリー

 まず、ある読者の方から、「@IT自分戦略研究所」のコラムを紹介して
頂きました。
  
 コラム:自分戦略を考えるヒント(4)
 偶然を起こし、偶然を生かす方法~キャリアの8割は偶然に支配される!

 「起-動線」の堀内浩二さんが書かれたコラムです。
 とても素晴らしいコラムですね。前回のメルマガで私が言いたかったこと
が、より具体的にわかりやすく述べられています。

 私がこのコラムを読んで最も衝撃を受けたのは、「プランド・ハップンス
タンス・セオリー」という理論です。
 これは、米国のカウンセリング学会誌等で発表された論文で、「変化の激
しい時代には、キャリアは基本的に予期しない偶然の出来事によってその8割
が形成される」とする理論です。
 そのため個人が自分のキャリアを形成するには、偶然を自ら仕掛けること
が必要になるとされています。


 堀内さんのコラムで「プランド・ハップンスタンス・セオリー」を知った
翌々日くらいに、定期的に訪問している中尾英司さんのサイトをブラリと訪
れてみると、何とそこにも「プランド・ハップンスタンス・セオリー」の記
事が掲載されているではありませんか。
 「おぉ、何たる偶然!」と感激していると、その直後に中尾さんからメー
ルを頂き、「プランド・ハップンスタンス・セオリー」をご紹介頂いたので
す。

 ※「プランド・ハップンスタンス・セオリー」については中尾さんがエピ
ソードを交えながら詳しく解説されています。ご興味のある方は、中尾さん
のサイトを是非ご覧下さい。
 http://www.jiritusien.com/kojin-career-8step12.htm

 中尾さんの記事を読んだ後に、『キャリアショック』をじっくりと読んで
みたのですが、素晴らしい本でした。この本には、「プランド・ハップンス
タンス・セオリー」以外にも、私にとって「眼から鱗」の内容がたくさんあ
りました。
 この本の感想については、また別の機会に述べてみたいと思います。


●仕事は楽しいかね?

 さて別の読者の方からは、「偶然」に対する考え方が似ているということ
で『仕事は楽しいかね?』という書籍をご紹介頂きました。
 この方は、この本に大きな影響を受けられたそうです。

 さっそく購入して読んでみたのですが、私もこの本にも感銘を受けました。
 この本の主張には『キャリアショック』と近いものがあるように思います。

 この本は、仕事に行き詰まりを感じている主人公が、大雪で足止めされた
空港で一人の老人との偶然の出会いを通じて、自己変革を成し遂げるきっか
けをつかむ物語です。
 この本の中で老人は主人公に対して以下のようなアドバイスをします。

  「人生は進化だ。そして進化の素晴らしいところは、最終的にどこに行
   き着くか、まったくわからないところなんだよ」
  「成功する人たちはね、自分がどこに向かっているかということはわか
   っていない-ただ、遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守ろう
   と思っている。」

 この老人は、多くの成功者が計画的に人生を管理したのではないこと、た
だ単に目の前の問題解決に集中し、その時に起きた偶然を見落とさなかった
だけであることを説明します。

 『キャリアショック』と『仕事は楽しいかね?』の二冊は、ITプロフェ
ッショナルがキャリア形成を進める上で、非常に参考になると思います。是
非、ご一読を!


『キャリアショック-どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか?』
キャリアショック-どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか?


『仕事は楽しいかね?』
仕事は楽しいかね?


●私自身のキャリア形成

 考えてみれば、私のこれまでにキャリアも大半が偶然の積み重ねでした。
 いかに、いきあたりばったりでキャリアを形成してきたかを参考までに紹
介します。

 私は、高校生の頃からジャーナリストになることを目標にしていました。
 大学4年生になってからは、放送局や出版社を中心にかなり熱心な就職活
動を行ないましたが、結果は惨敗。
 すると不思議なもので、長い間抱いていたジャーナリストへの思いが、ま
るで憑き物が落ちたかのように無くなってしまいました。
 人生の目標が突然なくなり、さてどうしようかと思っている時に、就職活
動を通じて知り合った広告代理店の社長さんからベンチャー企業に就職して
はどうかと勧められました。

 当時は、「ソード」や「コスモエイティ」などの企業が全盛で、第二次ベ
ンチャー・ブームの後半期でした。その社長さんはこれからの若者は大企業
ではなくベンチャー企業に就職すべきであると熱く語られました。
 すっかり洗脳されてしまった私は、ちょうどタイミング良く開催されてい
た某大手VC(ベンチャーキャピタル)主催の企業説明会に参加したのです。
その説明会はそのVCが自社の出資企業を集めた合同説明会でした。

 そこで出会ったのが現在の勤務先の代表でした。私の勤務先は、ソフト会
社としては、その大手VCが出資した第一号の企業でした。
 当時、私の勤務先はその代表が一人で営業をしているような小さな会社で、
従業員は大半が技術者でした。代表に「君は営業に向いているような気がす
る。私の鞄持ちをしてみないか。」と言われました。起業家の鞄持ちはきっ
と面白いに違いないと思い、世間知らずの私は深い考えも無くあっさりと入
社承諾してしまいました。
 ジャーナリスト志望で文系の私は、システム開発やプログラミングの経験
や知識は皆無でした。ひょっとすると「SE」という職種が世の中に存在す
ることすら知らなかったかもしれません。

 営業担当として入社したつもりの私ですが、入社してからは同期といっし
ょに技術研修を受けました。最初は、営業担当者も技術を知らなくてはいけ
ないんだろうと違和感もなく研修を受けていましたが、そのうち何か変だな
ぁと思うようになりました。
 ちょうど私の入社と時期を同じくして、営業マネジャーが中途入社してき
ました。その方が新入社員研修の講師を担当されたおりに、自分は営業担当
として採用されたはずであることを話しました。
 その営業マネジャー曰く、そんな話は初耳だということでしたので、驚い
た私は代表に確認しました。
 結局、当社の代表が入社前に私に言ったことはその場の思いつきで、おま
けに代表はそんな話をしたことすらすっかり忘れていのでした。(私の勤務
先の代表は、理屈よりも思いつきと勘で行動する人です。しかし、他の同期
のように技術職として採用されていれば、私はおそらく入社していなかった
と思いますので、何らかの縁があったのでしょう。)

 結局、営業マネジャーを雇ったばかりで、新米の営業担当者は当分の間必
要ないという結論になり、私はプログラマーとしての道を歩むことになった
のです。基本的に軽いノリで入社していますし、研修を通じてプログラミン
グがすっかり面白くなっていた私は、「まぁそういうこともあるさ」と気分
を新にしました。

 そして、ちょうど立ち上がったばかりの大手食品メーカーの戦略的物流シ
ステム開発プロジェクトに配属されたのでした。

 このプロジェクトは我々の業界にありがちな下請けではなく、勤務先がそ
の食品メーカーから直接受注したものでした。このプロジェクトは、その食
品メーカーの社運を賭けた大プロジェクトでしたが、それを請負契約で受注
した当社にとっても社運を賭けた大仕事でした。
 そのため、顧客の情報システム部門や勤務先からもエース級のSEが投入
されました。
 優秀な先輩達の下で仕事ができた私は、本当にラッキーだったと思います。
 このプロジェクトではマネジメントの基本がきっちりと行なわれていまし
た。このプロジェクトに配属されたことは今の私にとって大きな財産になっ
ていると思います。

 その後、このプロジェクトの大半の開発が完了し、運用準備フェーズに入
ったところで、私はこの大手食品メーカーの情報システム部門で立ち上がっ
た別のプロジェクトに配属され客先での常駐作業に従事しました。

 客先常駐プログラマーとしての日々を送っていたある日のこと、ぶらりと
訪れた営業マネジャーから飲みに誘われ、営業をやってみる気はないかと打
診されました。
 私の勤務先も事業が急速に拡大しつつある時で、そろそろ営業担当者の数
が足りなくなってきたのでした。経営者や私の上長に異動を依頼したところ、
まず私の意向を確認しろと言うことになったようです。

 当時、プログラマーとしての仕事は充実しており、このままSEになるの
も良いなと思っていました。ただ、好奇心が旺盛でいろんな人と接するのが
好きな私は、いつかは元々の志望である営業もやってみたいと思っていまし
たので、その考えを伝えました。
 私の異動を巡っては、時期も含め、会社の上層部で意見が分かれたようで
すが、できるだけ早い方が良いとの結論に至り、私のキャリアは大きく振ら
れることになります。

 私が営業に職種転換するのとほぼ同時期に、当社ではCG技術を売り物に
した技術計算系システムの請負開発専門のチームを立ち上げました。UNI
Xマシンや最新のグラフィックディスプレイ等に多額の設備投資をした当社
としては戦略的な事業でした。
 そしてそのチームリーダーから専任の営業担当者が欲しいという強い要望
があり、私はそのチームの営業として配属されました。
 ここで私は、会社やプロジェクトチームを代表して顧客や協力会社との折
衝や調整を担当しました。営業と言っても、単に仕事を取ってくるだけでな
く受注したプロジェクトの面倒を最後までみるのが私の役割でした。
 私のキャリアの中では、この営業プロジェクトマネジメントが最も長く、
現在の私のスキルやコンピテンシー習得の場になっていることは間違いあり
ません。

 もし、私が営業になるタイミングが少しでも遅ければ、このチームの専任
営業にはなっていなかったと思います。
(その後、私は、自社開発パッケージの営業や新規事業開発、経営企画等の
仕事を経て現在に至っています。)


 こうして振り返ってみると、私のキャリアのほとんどが偶然で形成されて
いるのが良くわかります。
 ただ、私は単に流れに身を任せるのではなく、目の前の課題に集中しなが
ら、常に自分のやりたい仕事を膨らませてきたと思います。
 また、直接的な利害関係のない人々ともコミュニケーションをとったり、
機会があれば積極的に自分の考えを述べる等の布石を打っていました。
 意識はしていませんでしたが、偶然をつかむ工夫をしていたのだと思いま
す。

--------------------------------------------------------------------
■「自分戦略」へのヒント

 ・キャリア形成の大半は「偶然」に支配されることを理解する。

 ・キャリアを形成するには、偶然を仕掛ける工夫が重要である。

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▼閑話休題▼

 先日、SCOの麻生社長のお話を少人数で聞く機会がありました。
 UNIXの知的財産権をめぐる争いで、すっかりと評判を落としてしまっ
たSCO社ですが、物事は視点が変われば随分と見え方が違ってくるものだ
なぁと実感した次第です。

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上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
 [No.035]「いきあたりばったり」で行こう!

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●読者からのご質問

 読者の方から、「No.032 SE本に惑わされるな!」に対して質問を頂
きました。

 まず、ご質問を頂いたメルマガの一部を掲載します。

 |●「自分戦略」に関する読者からのお悩み
 |
 | 「自分戦略」に関する質問で、読者の方から時々頂くのは、「真の
 |価値観や強みが見つけられず、うまく戦略策定できないが、どうすれ
 |ばよいか?」というものです。
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 | これらの質問をしてくる方々は、「自分戦略」を「公式計画・統制
 |型」のイメージで捉えているのではないかと思われます。
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 | おそらく「戦略」という言葉に、自分の置かれた環境の変化をしっ
 |かりと分析し、その分析に基づいて自分の進むべき道を決定するとい
 |うイメージがあるのかもしれません。
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 | そこには正しく分析をすることによって正解(完璧な戦略)が生み
 |出される。そしてその正解を実行することが「自分戦略」なのだとい
 |う意識があるように感じます。
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 | 従って、正解を生み出すためには、「真の価値観」や「強み」にも
 |正解を発見しなければならないという強迫観念があるのでしょう。
 |
 | はっきりと言いますが、少なくともSEの「自分戦略」に関しては、
 |この考えは間違っています。もし、「自分戦略」に上記のようなイメ
 |ージを持っているなら、それは改める必要があります。
 | なぜなら、SEの「自分戦略」は「仮説・検証型」だからです。
 |
 | SEの「自分戦略」は、仮説(計画)と検証(実行)の繰り返しで
 |す。
 | 机上で演繹的・短期的に生み出すのではなく、日々の活動や発想の
 |中から帰納的・長期的に生み出し、フィードバックを受けることで
 |「進化」させるものなのです。
 |
 | 「進化」ですから、時には偶然が大きく影響します。
 | 偶然は誰にも予想することはできません。自分の人生に思ってもみ
 |なかった展開が訪れます。
 | 「自分戦略」に正解(完璧な戦略)は必要ないことを理解して下さ
 |い。

 上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン」
  [No.032]SE本に惑わされるな!(2004/01/12) より抜粋

 頂いたご質問の内容を要約すると以下の通りです。

   SEの「自分戦略」が「仮説・検証型」と言われると、何となく
  もっともらしいのですが、よくよく考えてみると一貫性のない「い
  きあたりばったり」のような気がします。
   それに、「偶然」を前提にした「戦略」にも違和感を覚えるので
  すが、いかがでしょうか。


●「いきあたりばったり」こそ強み

 企業経営やプロジェクトマネジメントにおいて、「いきあたりばったり」
は、戦略なきマネジメントの代名詞みたいなもので、諸悪の根源のように
言われています。

 しかし本当に「いきあたりばったり」は悪いのでしょうか。

 今の世の中、これから起きることを正確に読める人はいないと思います。

 成功者の中には、あたかも自分は先の先まで読んで行動したようなこと
を言う人がいますが、後付の結果論にすぎないと思います。(流れを自分
で作ってしまった人はいると思いますが。)

 このような時代にあって、いくら頭の中で素晴らしい計画を作成しても、
その通りに物事を進めることは不可能です。
 「計画は達成されなければならない」という固定観念にはまってしまっ
て、現状にまったくマッチしない行動をとってしまうのがオチです。

 そもそも日本人は、「いきあたりばったり」が得意な人種のように思い
ます。
 「いきあたりばったり」は、日本人のDNAなのかもしれません。

 そして、トップダウン型でなくボトムアップ型のアプローチを身上とす
るSEの「自分戦略」にとっても「いきあたりばったり」は適していると
思います。

 ただし、留意して欲しいのは、私が主張しているのは、単なる「いきあ
たりばったり」ではありません。
 「自分戦略」としての「いきあたりばったり」は、能動的に「いきあた
りばったり」を行なうという点で、単なる「いきあたりばったり」とは異
なっているのです。

●「明日生まれる卵はいくつ?」

 つい先日、上記の私の考えに近い主張の本に出会い、とても心強く感じ
ました。

 それは、ベリングポイント社の増川稔浩さんが書かれた「明日生まれる
卵はいくつ?」です。


「明日生まれる卵はいくつ?―走りながら考える新経営戦略」
明日生まれる卵はいくつ?―走りながら考える新経営戦略

 この本はアメリカのサウスカロライナ州で酪農を営むヒルズ一家のスト
ーリーを通じて、走りながら考える新経営戦略手法である「ローリング・
フォーキャスト」を解説したものです。

 この中で増川さんは、以下のような主張をされています。

   計画は大事だけど、計画に縛られちゃいけない。
   「あるべき姿」は石にかじりついても実現しなければならないも
  のではなくて、環境が変われば変わるもの。

   計画は死んでも守らなければならないという時代は終わった。
   明日起こることは誰にもわからない。
   計画を守ることより、どれだけ柔軟に計画を変えられるかという
  視点で企業や経営者は評価されるべき。

   我々は今まで中小事業主の「いきあたりばったり」の経営よりも、
  大企業の「計画ベース」の経営の方が優れていると無条件に信じて
  きた。しかしこれは日本が成長する段階にだけに成り立つ一時的な
  ものだった。

 この本は、能動的「いきあたりばったり」のポイントを非常にわかりや
すく説明してあります。興味のある方は是非お読みください。


【余談ですが】
 システム開発プロジェクトの難しいところは曖昧な部分を残したまま、
走りながら徐々に契約や仕様を固めていくところにあります。
 システム開発は、レンガを積み重ねてコンクリートで固めていく塀作り
ではなく、粘土で創作する芸術作品のようなものです。
 不確実性を一切排除したシステム開発プロジェクトから良い成果が生ま
れるとは思えません。

 特に、契約確定フェーズや要件定義フェーズにおいては、「いきあたり
ばったり」をマネジメントしていくことで成功への道筋が開けるのだと思
います。


●「偶然」が生み出す進化

 机上や頭の中で考えた計画が、狙い通りの成果を生み出したことは、い
ったいどれくらいあるでしょうか。

 少なくとも私には、あまり記憶がありません。

 大きな成果やチャンスは、よくよく考えてみると「偶然」がもたらして
いることが多いと思います。

 増川さんの本の中でも、ヒルズ牧場を大きな成功に導くのは、ある「偶
然」がきっかけになっています。
 多くの読者は、しょせん作り話だから、うまく事が運んだと主われかも
知れません。
 しかし、実際に「いきあたりばったり経営」で成功している企業には、
必ずといっていいほど偶然が作用しているのです。これは「自分戦略」に
でも同様です。
(計画が不要だと言っているのではありません。念のため。)


 私自身のことで言えば、このメルマガは私自身の「自分戦略」における
一つの実行計画として発行されました。
 元々の発行の狙いはありますが、思った通りの成果には必ずしも結びつ
いていません。

 しかし、このメルマガを通じて思いもしなかった成果がありました。

 例えば、現在私は「プロジェクトマネジメントOS本舗」の好川哲人さ
んや「あきらめの壁をぶち破った人々」の中尾英司さんと非常に懇意にし
て頂いていますが、これらのリレーションは、このメルマガがなくては生
まれなかったものです。

 これらは、予想だにしなかった「偶然」の産物なのです。

【参考】

 「プロジェクトマネジメントOS本舗」 好川さんの運営するサイト
 
 「あなたの自律支援.COM」 中尾さんの運営するサイト

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■「自分戦略」へのヒント

 ・「いきあたりばったり」は、必ずしも悪いことではない。
 ・SEの「自分戦略」にとっても「いきあたりばったり」は適している。
 ・能動的に「いきあたりばったり」を行なうのは、単なる「いきあたり
  ばったり」とは異なっている
 ・机上や頭の中で考えた計画が、狙い通りの成果を生み出すことは希で
  ある。
 ・大きな成果やチャンスは、「偶然」がもたらしていることが多い。

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▼閑話休題▼

 先日、近所にある樹林公園の広場を使って、私が所属するボーイスカウ
ト団の全員で旗取りゲームを行ないました。(下は4歳から上は70歳まで。)
 ルールは以下の通りです。

 ・二チーム(一チーム35名)に分かれて旗を取り合う。相手の旗を奪い
  広場中央にいる審判長のところにいち早く到達したチームが勝ち。
 ・陣地を作り旗を置き、攻撃陣と守備陣に分かれる。敵に遭遇するとジ
  ャンケンをし、負けると腕につけた風船を割られる。風船を割られた
  ら広場にいる審判からのクイズに正解しないと戦線に復帰できない。

 我が方はリーダの意向により、各人が勝手きままに攻めるという戦法で
闘いに挑みました。一方敵チームは、チーム編成をして役割や侵攻ルート
をある程度定めて攻めてきました。
 結果は我が方の惨敗。3回戦行なってすべて負けるという悲惨な結果に
終わりました。

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