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上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
[No.040]リスクマネジメントとリスクテイク(2004/06/30)

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□■■  上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
■■□  [No.040]リスクマネジメントとリスクテイク(2004/06/30)
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●リスクマネジメントの不在

 ある時、大きな赤字を出したプロジェクトの反省会にオブザーバとして参
加しました。

 失敗原因として、「顧客がなかなか仕様を決めてくれなかった」とか「は
じめて取引をした顧客で勘違いや行き違いが多かった」等のITプロジェク
トでは、お馴染みの原因が列挙されました。

 当事者からは挙がりませんでしたが、私が一番大きな失敗原因だと感じた
のはリスクマネジメントの不在でした。

 確認したところ、そのプロジェクトは立ち上げ段階に十分なリスク計画を
行っていませんでした。
 そのため、実行段階で顕在化したリスクに対しての対応が後手後手に回っ
ており、まさに無防備な状態でした。

 事業責任者およびプロジェクトマネジャーに対して、「このプロジェクト
はリスクマネジメントが不十分でしたね。」と指摘したところ、そのプロジ
ェクトマネジャーは憮然として「それは結果論に過ぎない。リスクを事前に
予測するなんて無理だ。」と言い放ちました。

 確かにリスクには予想できないものもあると思いますが、過去の体験から
予測できるものも少なくありません。今回のプロジェクトで現れたリスクの
大半はプロジェクトマネジメントの経験者なら容易に予想できるものでした。
(少なくとも私はそう思いました。)

 リスクは予測できないと言い放ったマネジャーは、おそらく過去の経験か
ら何も学んでいないのだと思います。
 そのマネジャーは、その後も似たような失敗を繰り返しています。


●リスクマネジメントの手順

 失敗プロジェクトにおいては、リスクマネジメントがなされていないケー
スが少なくありません。
 これらのプロジェクトは着手前のリスク計画が不十分で、実行段階におい
てもリスクを監視していた形跡がありません。

 リスクマネジメントの一般的な手順は以下の通りです。

 ・リスク発見:どのようなリスクがあるか洗い出す
 ・リスク分析:それぞれのリスクの生起確率と影響度を想定する
 ・リスク対策:それぞれのリスクが発生した場合の対策を予め想定する。
 ・リスク監視:リスクあるいはリスクの予兆を監視しコントロールする。

 リスク発見と分析が不十分な場合は、自分達がどのようなリスクにチャレ
ンジしているかが明確に認識されていません。そのためリスクの顕在化をキ
ャッチするセンサーがまったく働きません。

 また、リスク対策がないため、リスクの発生を抑える先見的な行動がまっ
たく取れません。そして、リスクが顕在化した時には、無防備な状態で対応
が後手後手となります。

 それは、いつ氾濫するか分からない河川の流域に住んでいながら、どんな
危険があるのか予測もせず、何らの対策も立てないで暮らしているのと同じ
です。

 多くのITプロジェクトは生み出そうとしているものが曖昧で混沌として
います。その上、環境が激変します。
 また、受注者と発注者という関係や管理する側される側という間には必ず
利害関係の不一致があり、そこにはリスクを生み出す要因があります。

 つまりITプロジェクトは、それ自体がリスク(不確実性)の塊のような
ものです。
 ITプロジェクトを成功させるには、ITのスキルやノウハウは必要不可
欠なものですが、それだけでは十分ではありません。
 ITプロジェクトをリスク(不確実性)マネジメントなしで成功させるこ
とは困難なのです。

 リスクマネジメントは、プロジェクトマネジャーの腕の見せ所です。
 また、メンバーはリスク顕在化の臭いをいち早く察知してプロジェクトマ
ネジャーに報告するスキルと行動様式を身につける必要があります。


●リスク発見を阻害するもの

 リスクマネジメントの第一歩は「リスク発見」です。
 しかし、この「リスク発見」のプロセスを実行するのが、なかなか難しい
のです。

 私は勤務先において、プロジェクト計画にリスクマネジメントを導入する
ことを狙いとしてリスク・チェックシートを作成し、見積り時に義務付けて
いました。

 しかし、この目論見は見事に失敗したのです。

 多くのプロジェクトで行われていたのは、チェックシートの空欄を埋める
という単なる作業でした。
 まず形から入ることが重要と思いましたが、いつまで経っても魂が入らな
かったのです。

 形やルールだけを定めても、組織にリスクマネジメントを根付かせるのは
簡単ではありません。
 なぜならリスクマネジメントは、企業文化や事業責任者のキャラクターと
密接に結びつくからです。

 デマルコ&リスターは著書「熊とワルツを」の中で、リスク発見の阻害要
因として次のような不文律が企業文化に組み込まれていると指摘しています。

  1.マイナス思考をするな
  2.解決策が見つからない問題を持ち出すな
  3.問題だと証明できないことを問題だと言うな
  4.水をさすな
  5.すぐに自分で解決を引き受けるつもりのない問題を口に出すな


『熊とワルツを-リスクを楽しむプロジェクト管理』より
熊とワルツを-リスクを楽しむプロジェクト管理


 リスク発見の際には、とにかく後ろ向きなことをいかに多く言えるかが重
要なスキルとなります。
 その場にいる上席者が後ろ向きな発言を公式に容認し、「リスク発見モー
ド」になることが重要です。

 不安に思っていることを安心して口に出せる雰囲気を作り出すことが大切
なのです。


●リスクテイクと無謀

 リスク発見し分析したら、そのリスクはマネジメント可能かどうか、また
リスクテイクするだけの価値があるかを検討することが重要です。

 リスクの発見と分析は、リスクを洗い出しリスクを回避するためだけにや
るのではありません。本質的にはリスクテイクするためにやるだということ
を忘れてはなりません。

 環境変化の激しい今日においてはリスクテイクしない組織は発展すること
ができません。
 ただ、「リスクテイク」と「無謀」が異なることを理解する必要があるの
です。


 そして、自分戦略においてもリスクマネジメントは重要です。
 リスクは自分自身の枠を広げる絶好の機会となるからです。
 リスクテイクしない人間は、良い偶然を捉えることができません。そして、
リスクテイクしないと、良いキャリアを形成することはできないのです。

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▼閑話休題▼

 学生時代に麻雀にはまっていた時期があります。
 私がはまっていたのは、ギャンブルとしての麻雀ではなく「競技麻雀」と
呼ばれるものでした。仲間うちでは記録を残し成績を競いあり、「近代麻雀」
でお馴染みの竹書房が主催する大会にも参加していました。

 麻雀は偶然の要素が強い競技で、いわばリスクの塊です。
 偶然の要素が多いので、個々のゲームは時の運なのですが、記録を蓄積し
ていると、少数の勝ち組と大多数の負け組にわかれます。つまり長期的には
実力差が明確に出るゲームなのです。

 負け組を分析すると二つに分類できます。
 一つは、強気一筋で何も考えていない無謀派。もう一つは石橋を叩いても
渡らないような弱気な慎重派です。

 一方、勝ち組になれるのは、場の流れや自分を含めた競技者間のツキのバ
ランスを読みながら、ここぞというチャンスに勝負(リスクテイク)できる
タイプです。

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