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上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
 [No.025]PMBOKの甘く危険な香り

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■■□  [No.025]PMBOKの甘く危険な香り
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2003/09/19━
▼上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン バックナンバー
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●プロジェクトマネジメントブームに対する危惧

 去る9月2日と3日の二日間にわたって、財団法人エンジニアリング振興
協会と日本プロジェクトマネジメント・フォーラムの主催で「PMシンポ
ジウム2003」が開催されました。
 私は、初日はITトラックの会場責任者、二日目はセミナーの講師とし
て、このシンポジウムに参加しました。

 今回のシンポジウムは、参加者数が800人を超え、過去最高の入りとな
りました。プロジェクトマネジメント(以下、PM)の機運は年々盛り上
がっていると言えます。

 しかし、この状態に危惧の念を持つ方々も少なくありません。

 現在のPMは一種のブームであり、ブームである以上その熱は遠からず
冷めてしまうだろうという危惧です。

 なぜこのような危惧が生まれるかというと、現在のPMに対する熱心な
取組みは、過度な期待と誤解の上に成り立っていると思われるからです。
 関係者の間には、今のままでは過度な期待と誤解が失望に変わり、PM
が根付かない内に、忘れ去られてしまうだろうという懸念があるのです。

 特にPMBOKに対して、その心配があります。

 本日は、PMBOKを講義している者の立場から、PMBOKに対する
過度な期待と誤解を解く目的で、PMBOKを学ぶことの意義と危険性に
ついての私見を述べたいと思います。

●PMBOKを学ぶ意義

 先日の「PMシンポジウム2003」で日経BP社の谷島さんに「プロ
ジェクトマネジメントはなぜITで普及しないか」というタイトルで講演
をして頂きました。

 その講演の中で谷島さんは、「PMに関する記事を書くと、読者からネ
ガティブな反応がある。それも底深い根強い反発である。」と話されてい
ました。

 谷島さんは、これらの反発は大きく三つ分類できるとし、その二つめに
ついて以下のように説明されました。

   二つめはPMBOKを読んで納得できない人たちからの反発である。
   これらの人たちは、さらに二つに分けることができる。
   第一は、「これのどこが新しいのか」とういう反発である。特に製
  造業でTQCを手がけた人たちに多い。これらの人たちにはモダンP
  Mと従来のTQCの違いをわかりやすく説明しないと納得してもらえ
  ない。
   第二は、PMBOKを読んで怒り出す人である。「こんな能書きだ
  けでプロジェクトマネジメントはうまくいかない」という反発である。
  ベテランほど怒る。
   これにはメディアに責任がある。PMBOKをPMノウハウの決定
  版のように紹介してしまったからである。PMBOKは知識体系に過
  ぎない。具体的に何をすれば良いかが書いてあるわけではない。

 谷島さんの指摘の通り、PMBOKを呼んで怒り出すベテランがいるの
は事実です。私にも心当たりがあります。
 なぜベテランが怒り出すのかと言えば、PMBOKには当たり前のこと
しか書いてないからです。そこには画期的なものは何もありません。

 しかし、私の経験からすると、PMBOKを読んで怒り出すベテランよ
りは、PMBOKを高く評価するベテランの方が多いと思います。
 なぜ多くのベテランがPMBOKを評価するかと言えば、それらのベテ
ランはPMBOKを学ぶ意義を捉えることができたからです。

 意義としては、以下の二点です。

 一点めは、PMBOKを読むことで属人的なノウハウを他人に伝えやす
くなるということです。

 これは谷島さんも講演の中で話されていましたが、あるPMのベテラン
は、「PMBOKを読んで、今までの経験が体系的に整理できた。自分が
長年かけて蓄積したノウハウの教え方に気がついた。目からウロコが落ち
た。」とPMBOKを高く評価したそうです。
 これとまったく同じことを言ったベテランを私は知っていますし、実は
私自身もそう感じました。

 二点めは、PMBOKをきっかけにして、新たなノウハウが自分自身の
中から生み出されるということです。

 あるベテランのプロジェクトマネージャによると、新しいプロジェクト
に臨む際には必ずPMBOKを読んでいるそうです。
 そして、読みかえすたびに新たな発見があると言っています。

 私はこの話を聞いた時、映画監督のスティーブン・スピルバーグのこと
を思い出しました。
 スピルバーグ監督は、新しい映画を撮る前に必ず黒澤明監督の「七人の
侍」を観るそうです。その理由は、観るたびに新たな発見があるからだと
言っていました。

 あくまで個人的な感想ですが、PMのベテランやスピルバーグ監督は、
PMBOKや「七人の侍」自体から何かを学んでいるのではないように思
います。

 PMBOKや「七人の侍」といった優れた知的成果物に触れることで、
自分自身の中にある断片的な経験や知識が連結され新たなノウハウが生ま
れるのではないかと思います。
 長い間、潜在的に醸成されていた知恵が、PMBOKや「七人の侍」を
きっかけとして、ある瞬間に突然、顕在化するのではないかと思います。

 あくまで個人的な意見ですが、PMBOKは、PMのベテランが読んで
こそ真価が発揮されると思います。


●美しいものにはトゲがある

 次にPMBOKを学ぶことの危険性ついて言及しておきます。

 PMBOKは非常に美しい知識体系です。
 しかし、その美しさ故に、個人も組織も惑わされてしまう可能性があり
ます。

 まずは個人にとっての危険性の話です。

 PMのベテランは、プロジェクトは、のたくる大蛇のようなものである
ことを知っています。実際のPMはPMBOKのように美しいものではあ
りません。

 しかし、PM経験の少ない人の中には、PMBOKを読んだだけでPM
が分かったような気になってしまう人がいます。
 もちろんPMBOKは勉強することは良いことですし、PMPを取得す
るのは意義あることなのですが、魂の入っていない頭でっかちなPMPは
有害な存在であることを肝に銘ずるべきです。

 次に組織にとっての危険性の話です。

 PMBOK準拠のプロジェクトマネジメントシステムを導入することで
組織力がつくと安易に考えてはいけません。
 これを安易にやると形骸化した手順だけが残り、百害あって一利なしに
なります。

 PMは土壇場では個人のスキルに依存します。組織のPMプロセスにP
MBOKを取り入れるのは良いのですが、プロセス改善だけでは限界があ
ることを理解しなければなりません。

 PMBOKは、企業が抱えるすべての問題を解決する特効薬ではありま
せん。
 そのことをよく踏まえて、導入の際には経営戦略とリンクさせ、組織文
化や意識改革するつもりで取り組む覚悟が必要です。


●PMBOKは基本型である

 PMBOKはPMの知識体系として極めて優れていますが、あくまで基
本型であることを忘れてはいけません。

 先日、柔道の田村選手が世界柔道6連覇という偉業を成し遂げました。
 田村選手のような柔道の達人になるためには、まずは基本型を習得しな
ければなりません。
 しかし、基本型を覚えただけで実際の試合で勝つことができないのは言
うまでもありません。実戦を通じて経験を積む必要があります。

 そして経験を通じて自分なりの型を作っていく必要があります。
 まさしく「守・破・離」がPMにおいても大切なのです。

 【守・破・離】
   武道などにおいて以下の三段階で道を究めること
    守:教えを忠実に守る
    破:自分なりの発展を試みる
    離:教えを離れ独自の境地に達する


●おまけの話

 「PMシンポジウム2003」の講演において谷島さんが挙げたPMに
反発する分類の第一番めは「知らない人」でした。

   一つめは、そもそもPMBOKを代表とする「モダンPM」を知ら
  ない人である。数としてはこれが一番多い。
   現在、プロジェクトマネジメントは一種のブームになっているが、
  読者の書き込みを読むと、まだまだ世間には知られていないと実感す
  る。PMBOKの存在すら知らずに、記事の批判している人が多いの
  で困ってしまう。

 これは、私も実感します。
 つい先日、ユーザ系の某大手SIerでPMBOKの講師を務めました。
 参加者は30歳前半から40歳前半のまさしく現場の最前線にいるプロジェ
クトマネージャやプロジェクトリーダ達でしたが、参加者40名のうちPM
BOKの名前を知っていたのは、わずか数名でした。残りの方々は名前す
ら聞いたことがなかったようです。

 SEであれば、プロジェクトマネージャになる気がなくてもPMBOK
には一度、目を通しておいた方が良いと思います。
 まだPMBOKを読んだことがないという方は、これを機会に是非、読
んでみて下さい。

 読んでみて不明な点があったら、質問のメールは大歓迎です。


「PMBOK2000年版(日本語訳)」
PMBOK2000年版(日本語訳)

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■閑話休題

 私の住まいは東京の西武池袋線の沿線にあります。
 先日、この路線で踏み切り事故があり、電車が不通になってしまいまし
た。帰宅時間と重なってしまったため池袋の駅は大混乱でした。

 私は、東武東上線に乗って自宅に一番近い駅で降り、そこからバスで帰
るルートを選びました。
 電車はそれほど混んででなかったのですが、駅を降りてびっくり!
 バス停は、最後尾がどこかわからないほどの大行列で、バスに乗るまで
1時間以上かかってしまいました。

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