« 上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
 [No.022]EA(Enterprise Architecture)の思想
| Main | 上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
 [No.024]上司について考える(2) ディレールメント »

上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
 [No.023]上司について考える(1) ピーターの法則

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□□■
□■■  上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
■■□  [No.023]上司について考える(1) ピーターの法則
■□□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2003/08/15━
▼上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン バックナンバー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●はじめに

 このメルマガは、タイトルの通り「上司に恵まれないSEのために」発
行しています。

 「良い上司に恵まれていなくても、楽しく充実したSE人生をおくるに
は、どうすれば良いのか」について、少しでもヒントになることを書きた
いというのが、このメルマガの基本的なテーマです。

 良い上司に恵まれていない状態は、言わば変えようのない外部環境であ
り、そのような逆境にくじけることなく、強く生きていくために「自分戦
略」を考えましょうという提案をしています。

 従って、変えようのないことに触れても仕方ないので、これまでは上司
の問題については、あまり言及していませんでした。

 しかし、何故、問題上司が生まれてしまうのか、また問題上司のどこが
問題なのかを考察することもまた、楽しく充実したSE人生を送るために
役に立つと思います。

 今回と次回にわたって、問題上司について考えてみたいと思います。

●「ピーターの法則」について

 ご存知の方も多いと思いますが、世の中には「ピーターの法則」という
ものがあります。

 これは、1969年にカナダの社会学者ローレンス・ピーター博士が、その
著書「ピーターの法則-創造的無能のすすめ-」で発表したものです。

 「ピーターの法則」の主な内容は以下の通りです。

   ■階層社会にあっては、その構成員は(各自の力量に応じて)それ
   ぞれ無能のレベルに達する傾向がある。

   ■時がたつに従って、階層社会のすべてのポストは、その責任を全
   うできない構成員によって占められるようになる傾向がある。

   ■仕事は、まだ無能のレベルに達していない構成員によって遂行さ
   れる。

 企業等の階層社会においては、構成員に対して昇進圧力がかかり、出世
することが求めらます。
 構成員が上昇志向を持ってより上位ポストを目指して働くことが、組織
を活性化し推進する原動力になると考えられているからです。


 そんな中で、組織の目標に対して貢献した優秀な構成員は評価され、昇
進していきます。

 しかし、すべての仕事に対応できるような能力を持ったスーパー人材は、
そうそういるものではありません。

 多くの人材は昇進によって、いつの日か自分自身の力量を超えるポスト
に就いてしまい、無能のレベルに到達します。
 そして、無能のレベルに達した段階で、その人材の昇進はストップし、
そのポストに留まることになります。

 さて、これが繰り返されていくことを想像してみて下さい。

 恐ろしいことに、やがて組織のすべてのポストは、無能な構成員によっ
て占められるようになってしまうのです。(一般に企業の寿命が30年と言
われる原因も、ここにあるのかもしれませんね。)


 従って、ある組織が何らかの価値を世の中に生み出している場合、その
組織を推進しているのは、まだ無能のレベルに達していない人材であると
いうことになります。

 この法則の通りだとすると、無能のレベルに達した部長よりも、発展途
上の新入社員の方が、組織に対して貢献しているということになりますね。
 何とも身につまされる話ではありませんか。

「ピーターの法則」
ピーターの法則

●SE業界に見られる「ピーターの法則」

 この「ピーターの法則」はSEの業界でもよく見られると思います。

 多くの企業に見られるSEのキャリアパスは極めて単線的です。

 即ち、
  (1) 最初は、見習いとしてコーディングやプログラミングを担当する。

  (2) プログラミングが一人前にできるようになると、徐々に上流工程
    を担当するようになる。

  (3) プロジェクトの経験を重ねていく中で、チームリーダーやプロジ
    ェクトリーダーを任されるようになり、やがてプロジェクトマネ
    ージャになる。

  (4) プロジェクトマネージャとして実績を積むと、ラインマネージャ
    となり予算管理や労務管理に関する責任を負うようになる。

  (5) ラインマネージャとして実績を上げると、役員となり企業経営に
    携わるようになる。

 このようなキャリアで人生を過ごすのは、もちろん悪いことではありま
せん。素晴らしい人生だと思います。

 しかし、SEである読者の皆さんは、こんな人生に魅力を感じますか?
 (魅力を感じるのが悪いというわけではありませんよ。念のため。)

 私の身近でも、多くの優秀なSEがこのようなキャリアパスを辿ってい
きました。彼らは、所得には比較的恵まれているので、ひょっとすると満
足な人生を送っているのかもしれません。

 しかし、私の目からは、彼らがハッピーであるようには見えないのです。

  ■テクニカルな分野では一流の腕前を持ちながら、対人折衝が苦手で
  顧客からの評判を落としてしまったプロジェクトマネージャ。

  ■SEとして顧客からも社内からも評価が高かったのに、管理職にな
  ってからは、部下からの不平や不満が絶えないラインマネージャ。

  ■管理職になって部門の採算責任や労務管理責任を持たされるのが嫌
  になって退職してしまったプレイングマネージャ。

 「ピーターの法則」が、問題上司を生み出す原因のひとつであるのは疑
う余地がありません。

 管理職で無能のレベルに達してしまった人材は、確実に問題上司になっ
てしまうのです。

●ノーベル賞を受賞した田中さんの偉大さ

 日本の多くの企業では、ラインにのって出世することがサラリーマンの
花道という固定観念があります。

 ラインから外れることは不名誉なことであり、ラインマネージャとスタ
ッフであるスペシャリストの間では、収入にも大きな差がついてしまいま
す。

 かくして、日本の多くのサラリーマンは、日々無能のレベルに達するた
めの努力を重ねることになるわけです。

 そんな日本企業にあって、ノーベル賞を受賞した田中さんが、昇進を断
って研究職に留まったのは本当に尊敬に値します。

 スペシャリストである田中さんが果たした貢献は、ラインマネージャが
束になってもかないません。

 田中さんが階層社会の圧力に負けて昇進していたら、あの成果は生まれ
なかった訳ですからスペシャリストにとって「ピーターの法則」を回避す
ることがいかに大切かがわかります。

●「ピーターの法則」を回避するにはどうするか

 SEというスペシャリストの集団である情報サービス業やソフトウエア
ベンダーにおいては、なんとしても「ピーターの法則」を回避しなければ
なりません。

 個人的に思う「こうなればいいなぁ」という姿は、以下の通りです。

  ■有能な人材はラインのマネージャであるべしという固定観念や企業
  文化を払拭する。(昇進圧力をなくす。)

  ■ポストと処遇を連動させることを止めて、たとえ平社員であっても
  優れた成果を生み出すプロフェッショナルには役員クラスの給与が支
  払われる。

  ■ポストと名誉が切り離れ、優秀なスペシャリストは優秀なラインマ
  ネージャと並び称されるようになる。

 しかし、上記のような理想は、縦型社会に馴染んだ日本の企業で実現す
るには、かなり骨の折れることです。

 個々の努力は大切ですが、理想を実現するには、やはりトップマネジメ
ントの変革意欲が最も重要です。

 ただ困ったことに、トップマネジメントには、「スペシャリストでいよ
うとする人材は利己主義者であり、昇進意欲があり帰属意識の高い人材よ
り組織貢献が低い」という誤った認識を持った人が多いように思われます。

 確かにスペシャリストは組織に対する帰属意識よりも、自分の専門領域
に対する帰属意識の方が強いのは事実であると思います。

 しかし、スペシャリストは利己主義者ではありません。組織に対する貢
献の形が違うだけであって、スペシャリストが組織の目的や目標に対して
果たす貢献の度合いはラインマネージャに劣るものではありません。

 組織を育成しているのはラインマネージャだけではありません。
 優秀なスペシャリストは、組織の知識ベースや人材育成に多大な貢献を
しています。

 本来スペシャリストは組織内の昇進よりも自分の専門領域を極めたいと
いう欲求の方が強いはずです。

 そしてスペシャリストは、自分の専門領域で世の中に貢献を生み出す時
に、最大の力を発揮するように思います。
 これは昇進意欲よりも組織を推進する大きな力になります。

 なによりも大切なのは、トップマネジメントが、優秀なスペシャリスト
人材は企業を推進する原動力であること理解し、スペシャリストの働きに
心から敬意を払うことです。

 スペシャリストの多くは企業に対する忠誠心は低いかもしれません。し
かし同じ目的を達成するための力強いパートナーなのです。
 昇進を第一とし組織に同化している人材よりも、はるかに頼りになる存
在です。

 トップマネジメントが、スペシャリスト人材に対して、昇進圧力をかけ
るのを止めることを切に願います。
 それが、「上司に恵まれないSE」を救い、組織を真に活性化させるこ
とになると信じるからです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■閑話休題

 先日、「人生ゲーム」を買ってきて子供達と一緒に遊びました。
 スペシャリスト・コースかビジネス・コース(サラリーマン・コース)
のどちらかを選んでからスタートします。

 スペシャリスト・コースにはプログラマーもあります。(スペシャリス
トになれないとフリーターになってしまいます。なかなか含蓄に富むゲー
ムですね)

 ゲーム開始前に、小学校三年生の娘と小学校一年生の息子に、それぞれ
の職業について説明しました。
 娘が息子に「サラリーマンならお父さんと同じ仕事だね」と言ったせい
か、息子は常にビジネス・コースに進んでしまいます。

 常にスペシャリスト・コースを好んで進む私としては、複雑な心境です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ご意見・ご感想・ご質問:mentorpin@mbk.nifty.com
購読登録・解除 : http://homepage3.nifty.com/mentorpin/
─────────────────────────────────
発行元:メンターピン・コンサルティング
     http://homepage3.nifty.com/mentorpin/
─────────────────────────────────
原則として無断転載を禁じます。
ただし、内容を一切改変せず全文転載する場合に限り転載許諾は不要です。
(C) Copyright Mentorpin Consulting 2003
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




|

« 上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
 [No.022]EA(Enterprise Architecture)の思想
| Main | 上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
 [No.024]上司について考える(2) ディレールメント »

「メルマガ・バックナンバー」カテゴリの記事

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/16525/394285

Listed below are links to weblogs that reference 上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
 [No.023]上司について考える(1) ピーターの法則
:

» PRESIDENT-ざっし2 [Lsa]
プレジデント「会社と人の心理学」2004 8.2号を少し読んで感想です。 上... [Read More]

Tracked on 2004.07.26 at 12:55 AM

» 本とビデオ [行間の宇宙]
こんにちは。IT業界に棲む日日、を興味深く読ませていただきました。勉強になりました。会社員にとって、よい上司やいい上司に巡り会うというのは最高の幸せですよね。また読ませていただきたいと思います。... [Read More]

Tracked on 2008.01.19 at 10:25 PM

« 上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
 [No.022]EA(Enterprise Architecture)の思想
| Main | 上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
 [No.024]上司について考える(2) ディレールメント »