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上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン
 [No.022]EA(Enterprise Architecture)の思想

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■■□  [No.022]EA(Enterprise Architecture)の思想
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2003/08/01━
▼上司に恵まれないSEのために-自分戦略策定マガジン バックナンバー
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●EAとは何か

 前回、日本政府がソフトウエア開発にエンジニアリングを導入しようと
している動きを紹介しました。
 今回も前回に引き続き、政府が力を入れて進めている施策について紹介
します。

 今回は、EA(Enterprise Architecture)の話です。

 EAの概念は米国で誕生し、米国政府が連邦政府のシステムを統合化す
る目的で推進しています。

 米国政府は、機関をまたがる業務プロセスを統合化し情報システムの投
資対効果を最大限にするために、1999年9月に「連邦政府エンタープライ
ズ・アーキテクチャ・フレームワーク(Federal Enterprise Architecture
Framework)」を作成しました。

 そして、2002年2月にエンタープライズ・アーキテクチャ・プログラム
管理局(FEAPMO:The FEA Program Management Office)が設立さ
れ、FEA開発に着手しています。


 日本においては、「e-Japan戦略」に基づいて、電子政府を構築
する中でEAの必要性が認識されはじめました。

 行政システムに限った話ではありませんが、これまでの情報システムは、
それぞれの現場や場面のニーズに沿って個別に開発・運用されてきました。

 それぞれのシステムが個別に稼動しているうちは良かったのですが、電
子政府のように、すべてを連携させようとすると、相互接続性の点で大き
な問題が発生します。

 つまり、縦割り行政の中で継ぎはぎで開発されてきた情報システムを統
合するために、システムに「アーキテクチャ」という「思想」を導入する
ことが必要になってきたのです。

【補足説明】

 EAをよく理解するには、まず「アーキテクチャ」の概念を知ることが
必要です。

 ANSI/IEEE 規格 1471-2000による「アーキテクチャ」の定義
は以下の通りです。

  システムのコンポーネント、コンポーネント同士と環境との間の関係、
  およびその設計と進化を支配する原理に体現された、システムの基本
  的な構造 。

 「アーキテクチャ」に関する理解を深めたい方には、以下の本をお薦め
します。

「職業としてのソフトウェアアーキテクト」
職業としてのソフトウェアアーキテクト

●部分最適化から全体最適化へ

 EAを簡単に言ってしまうと、組織を「部分最適化から全体最適化」す
るということです。

 従来の情報システムの多くは、部分最適化に留まっていました。EAは、
バラバラで継ぎ接ぎだらけのシステムを最適にかつ美しく統合するための
設計図とルールと捉えることができます。

 従って、EAには業務オーナーのビジョンと意思決定が極めて重要です。
スコープをどこに設定するかも業務オーナーの意思によります。


 そして全体最適化を実現するために大切なのは、システムはモノではな
いということを理解することです。

 すべてのシステムは、それだけで全体を実現していません。コンピュー
タシステムは、経営や社会などのシステムの一部であり、それだけで完結
しているわけではありません。

 このことは、日本政府がEAで利用している機能モデルを見ると良く理
解できます。

        図1.業務全体の機能モデル

  ┌─┬─┬─┐ ┌─┬─┬─┐ ┌─┬─┬─┐
  │A1│A2│A3| │B1│B2│B3| │C1│C2│C3|
  ├─┼─┼─┤ ├─┼─┼─┤ ├─┼─┼─┤
  │ │A│ | │B4│B│B5| │C4│C│C5|
  ├─┼─┼─┤ ├─┼─┼─┤ ├─┼─┼─┤
  │A4│ │A5| │B6│B7│B8| │C6│C7│C8|
  └─┴─┴─┘ └─┴─┴─┘ └─┴─┴─┘
         \   ↑   /       
  ┌─┬─┬─┐ ┌─┬─┬─┐ ┌─┬─┬─┐
  │D1│ │D2| │A│B│C| │F1│F2│F3|
  ├─┼─┼─┤ ├─┼─┼─┤ ├─┼─┼─┤
  │ │D│ |←│D│X│F|→│ │F│F4|
  ├─┼─┼─┤ ├─┼─┼─┤ ├─┼─┼─┤
  │D3│ │D4| │G│H│I| │F5│F6│F7|
  └─┴─┴─┘ └─┴─┴─┘ └─┴─┴─┘
         /   ↓   \       
  ┌─┬─┬─┐ ┌─┬─┬─┐ ┌─┬─┬─┐
  │G1│G2│G3| │H1│H2│H3| │I1│ │I2|
  ├─┼─┼─┤ ├─┼─┼─┤ ├─┼─┼─┤
  │ │G│ | │H4│H│H5| │ │I│ |
  ├─┼─┼─┤ ├─┼─┼─┤ ├─┼─┼─┤
  │G4│G5│G6| │H6│H7│ | │I3│ │I4|
  └─┴─┴─┘ └─┴─┴─┘ └─┴─┴─┘

 例えば、Xが企業全体の業務だとすると、Aは人事給与、Bは財務会計、
Cは購買管理・・・というふうにモデル化されます。そしてさらに、Aの
人事給与は、A1の人事評価、A2の給与支払・・・というふうにモデル化さ
れます。

 この図を見ると、システム構築は単なるモノづくりではないことが理解
できると思います。

(ちなみに、この図は仏教の「曼荼羅(まんだら)」にそっくりなことか
ら「マンダリックス」と呼ばれています。)

●政府のEAに対する具体的取組み

 EAは以下の4つのアーキテクチャで構成されます。

  ・BA(ビジネス・アーキテクチャ)
  ・DA(データ・アーキテクチャ)
  ・AA(アプリケーション・アーキテクチャ)
  ・TA(テクノロジー・アーキテクチャ)

 またEAを形成するために以下の5つの参照モデルが提供されます。

  ・PRM(パフォーマンス参照モデル)
  ・BRM(ビジネス参照モデル)
  ・SRM(サービスコンポーネント参照モデル)
  ・DRM(データ参照モデル)
  ・TRM(技術参照モデル)

 政府は、今年の3月からEAを使った実験プロジェクトを行なっていま
す。
 まず第一弾として、経済産業省の図書館システムをEAで構築しました。

 ITベンダーにとっては、RFP(提案依頼書)がEAベースで作成さ
れるようになると、対象システムの内容がわかり易くなります。
 新規参入者にも体系的に対象システムが理解できるようになり、提案を
しやすくなるというメリットがあります。
 また、得意分野別に協業を組みやすくなり、領域別フェーズ別の参加が
できるようになることが期待されます。

 これまでのように大手メーカに独占された政府調達案件に、小規模な会
社やベンチャー企業が参入できるチャンスが生まれます。


 政府は、今回の実験プロジェクトで開発されたツールや手法は、すべて
公開する予定です。
 そして、これらのツールや手法は、政府調達の中心人材となるCIO補
佐官やITコーディネータに使わせることでブラッシュアップしていく意
向のようです。

 Webサービス等の普及により、今後あらゆるシステムを連携させる時
代が来ることが予想されます。

 電子政府が成功するかどうかは、また別の話ですが、「アーキテクチャ」
の思想とともにEAのフレームワークがIT業界に普及する可能性は高い
と考えています。

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■閑話休題

 先日、「マトリックス・リローデット」を観ました。

 この映画の中で、主人公のネオが仮想現実である「マトリックス」を生
み出した人物と会うシーンがあります。
 ネオが「お前は誰だ?」と尋ねたところ、この人物は「私は“アーキテ
クト”である。」と答えました。

 「マトリックス」を生み出したのが、政治家や企業家ではなく“アーキ
テクト”であるという設定に、思わず感心してしまいました。

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